火山が多く温泉も豊富で自然裕かな日本。
半面、自然災害の多い日本に住むということは普段からの備えの重要性が言われて久しいです。
超非日常が突然起こり、ライフラインが止まったり避難所生活を余儀なくされることもあるかもしれません。
そんな時だからこそ、食べ物の栄養が大切になります。
カロリーだけを取る菓子パンやお菓子等が中心になると、せっかく命は助かっても、その後体調を崩す方が多いのです。
強いストレスからの不調も避けなければなりません。
ここでは、おすすめできる災害時非常食の栄養を薬膳の視点からピックアップします。
目次
災害時の非常食の選び方は過ごす場所で考える
まず、自宅で過ごせるのか、避難所で過ごすのかで考えてみましょう。
避難所の場合
避難所に行けば安心ですが、直ぐに食料や毛布などが支給されるわけではないので注意です。
災害時に一番困ったものは何か?を2018年の西日本豪雨時に避難所生活をした人に実際に聞いた「避難所のリアルな食料事情とは・・・」によると、避難所生活で最も困ったのは水がないこと。次に食料でした。
自宅が土砂崩れや浸水で危険な場合は、避難所に避難するのが賢明ですが、食料目的に行くのは思いとどまった方が良いかもしれません。
「最初の救援物資が届いたのは被災当日の夕方5時頃で、ごくわずかなアルファ米(炊いた米を乾燥させたもの。湯や水を注いで食べる)と水、毛布10枚だけでした。
その翌日、地区にある備蓄品倉庫の鍵が届いたので、レトルトのカレーや豚丼にパックごはんがついたセットの非常食や飲用水などをようやく地域の方へ配ることができたんです。そして、4日後くらいから白いごはんをにぎっただけの小さなおにぎり2個パックが1人あたり1日に1回届くようになりました。
でもそれだけじゃ全然足りなくて、地域の方が持ち寄った食材でどうにか賄っていた状態ですね……。きちんとしたものが十分な量で届くようになったのは被災から1週間くらい経ってからだと思います。ですから、やっぱり1週間分くらいの食料は自分で準備しておくべきですね」
交通が遮断された場合は、その日の食べ物が支給できないことがあります。
その上、届いても中心となるのはおにぎりや菓子パンなどの炭水化物が中心で、野菜や肉類・魚類などのたんぱく質が不足というレポートも上がっています。
東日本大震災の発生約1カ月後、笠岡室長ら支援チームは、被災地のある市で避難所(69施設)の食事の状況を詳しく調査。その結果、4分の1の避難所で穀類、つまり、おにぎりやパンなどの炭水化物の主食が過剰に提供されていた。
一方で、おかずとなる野菜や肉類、魚介類などが過剰なほど提供された避難所は皆無に等しく、明らかに不足していた避難所が4分の1近くに上っていた。乳製品が不足していた所は4割を超えていた。
カップ麺や菓子パンが過剰な避難所も目立ち、中には被災して下水道が使えないため、避難所の運営者にカップ麺の汁は捨てずに飲み干すよう求められたケースもあったとされる。「提供された食事によって、逆に健康が悪化しかねない状況も心配された」という。
ここからわかることは、家族の人数分、できれば1週間分の量が必要であること、避難所で支給されるであろう食料と栄養的に重複しない備蓄も必要であることがわかります。
ただ、家族の人数分の食料1週間分を、避難所まで運べるのかは別問題となります。
せめて3日分程度を避難時に運ぶ方が良いのではないでしょうか?
自宅に留まる場合
1.まずは冷蔵庫に保存しているものから
ライフラインが止まっても、家にいれば安全である場合や何らかの事情ですぐに避難所に行けない場合は、自宅の食料備蓄で過ごすことになりますね。
ガスと電気が止まったらまず冷蔵庫にあるものを食べることになりますが、その時、カセットコンロと水があれば何とか調理はできます。
この時、断水していたら備蓄のペットボトルの水を節約するためにビニル袋調理がおすすめです。
水を節約するためには洗い物を出さないように、調理器具と食器をビニル袋で兼ねるということになります。
その際は、必ずビニル調理用のものを使います。半透明の高密度ポリエチレン袋です!透明のツルツルしたのは止めて下さいね。
2.できるだけ、普段食べ慣れているもので
初めは極度の緊張感から空腹を感じないケースが多いようです。
しかしながら、被災期間が長期化するようであれば体力勝負ですから、やはり体調管理のためには食事は重要です。
この時、いきなり食べ慣れないものを食べると消化機能に当たる五臓の「脾」が上手く働かないことがあるため、できるだけ普段食べ慣れているものにすることがおすすめです。
例えば、ご飯とお味噌汁や野菜スープなど。
温かい料理は冷えに弱い消化器系の臓器を守る効果もあり、メンタル的にもホッとして極度のストレスから解放されるためです。
選ぶ食材は、人の生命力や臓器を正常に動かすパワーである「気」を補う、芋類、人参、きのこ類、あれば鶏肉や玉子がおすすめです。
火の通りを良くするために、小さめの一口サイズに切ることもポイントです。
漬物があれば、漬物も加えてください。
発酵食品で腸内環境が整うこと、ポリポリ、カリカリという歯ごたえのあるものは唾液の分泌を良くさせて消化の助けになるだけでなく、ストレス解消にも効果があるのです。
3.備蓄の食料では
やはりなるべく、食べ慣れたものが良いことには変わりはありません。
被災したからと初めてのものを食べるより、普段、たまには災害用の食事を食べてみるのを習慣にするとよいですね。
賞味期限が間近のものを入れ替える時がタイミングです。
今日は、災害時の練習として、家族で備蓄食料デーにしてみてはいかがでしょうか?
おにぎりやパックご飯などの炭水化物は避難所でも支給されるので、缶詰の魚や肉類のたんぱく質系のものを忘れずに準備しておきましょう。
たんぱく質が、避難生活で一番不足する栄養です。
災害時のために薬膳の視点から備蓄をおすすめする非常食
では次に、自宅に居ても避難するにしても、どんなものを備蓄しておくと良いのかを中医学の視点から薬膳に結び付けます。
1.パワー(気)になるもの
世界中の国で主食となっているものが多い「気」を補う補気食材です。
日本人ならやはり米でしょう。
長期保存を考えると、水やお湯を入れたら食べられる乾燥状態のアルファ米がおすすめです。
白米だけでなく、お赤飯、ピラフなどバリエーションもある程度あるのでいくつかあると良いと思います。
パック米もあると良いですね。避難所ではパック米とフリーズドライの味噌汁が人気だったようです。
2.普段食べ慣れたもの
カレーは和食か?というほど子供から大人までカレーが好きな人は多いです。
普段食べ慣れたものの一つとしてカレーがあると子供も安心ですが、問題はお湯で温めなければならないこと。
その点、そのままでも食べられるカレーがあるのでそれも備蓄しておくことをおすすめします。
基本、レトルトカレーは完全に調理されているため、そのままでも食べられるのですが動物性油脂が固まったり分離しているため温めた方が美味しく食べられるとメーカーからの回答をご参考にしてみてください。
(参考)ハウス食品株式会社
3.気持ちを緩める甘いもの
災害時は、極度の緊張という強いストレスがかかります。
そんな時にあると良いのが甘い味の食べ物です。
疲れた時に、甘いものが食べたくなるのは気持ちを緩めたいという欲求の表れでもありますね。
糖質が不足気味なら、羊羹などの砂糖が使われた保存の効くものが良いですし、砂糖をそこまでとりたくないのであれば、天然の甘い味の物がおすすめです。
例えば、干しいも。
干してあるので甘みも増ますし、さつまいもはもともと体の構成要素「気血津液(水)」の「気」を補ってお腹を丈夫にする効果があります。
つまり、元気のチャージができるわけです。
「気」が足りていないと寒さも感じる、疲れも感じる。便秘しやすい。そんな時には干しいもがおすすめです。
「血」が足りていないと不安を感じてよく眠れなくなります。
慣れない避難所、すぐそばには他人。大人でも安眠はしにくいでしょう。眠れなければ「血」は作れません。「血」が足りないとなかなか復旧しないライフラインにイライラも募る、キレやすくなる。
それを解消するためにレーズンをおすすめします。
レーズンが苦手ならプルーンでもブルーベリーもあります。
生のフルーツは洗うための水や食器が必要ですがドライフルーツなら手軽に食べられて甘さがほっこりさせてくれます。
「血」を増やすのは赤や黒でちょっとねっとりしたものと覚えておいてくださいね。
プルーンは食べ過ぎるとお腹が緩くなる人がいますのでご注意ください。
それから、黒糖。
熱中症対策でも食べるように言われている黒糖です。
ミネラルが豊富でエネルギーも確保できます。薬膳的にも温める砂糖が黒糖でお腹を強くしたり血巡りの効果もあります。
避難所でじっとしている時間が長いと、エコノミー症候群のような症状が出る方もいらっしゃるかもしれません。できる範囲でのストレッチは大切ですが、血巡り効果のあるもので手軽に口に入れられる黒糖はおすすめです。
災害時の非常食の多くは登山用品専門店やアウトドア用品専門店でもまかなえます。
日常で覗いてみても良いでしょう。
4.肉や魚の缶詰
人間も動物なので、野菜よりは動物性のものの方が親和性が高いため早く栄養になると考えられています。
「血」や「気」になる牛肉のしぐれ煮やサバ缶などのそのままでもすぐに食べられる缶詰やレトルトパックを準備しておきましょう。
缶詰の場合は、缶切りが必要なものもあります。その場合は合わせて缶切りを準備することをお忘れなく。
非常食で栄養的にも満足できるおすすめのもの まとめ
被災すると言う、超非日常の怖い、不安な状況下では、なるべく日常の食べ慣れたもので栄養を摂ることが重要です。
ポイントとなるのは、やる気、前向きな姿勢、体温維持、体の抵抗力維持などの視点から補気食材である米、芋類等をできるだけ温かい状態で食べることが大切です。
冷たいおにぎりしかなくても、お湯で溶いたらできるフリーズドライの味噌汁やスープなどがあれば消化機能を弱らせず緊張を一瞬でも緩めることができるでしょう。
甘い味も緊張を緩めるので非常食に入れておきますが、同時に不足しがちな「血」を補うレーズンや体を温め血めぐりに効果がある黒糖を備蓄品に入れておいてください。
避難所ではたんぱく質が不足しがちなので、そのまま食べられる魚や肉類の缶詰の備蓄の忘れないようにしましょう。
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