夏の飲み物に炭酸水を飲む人が増加傾向にあります。
炭酸水は水と同じように飲んでも大丈夫なのか胃腸への影響はどうなのか?
ここでは中医学の視点から炭酸水を飲むメリットとデメリットを解説します。
炭酸水とは?
まず誤解のないように、炭酸水と炭酸飲料を区別しておきます。
炭酸水は飲料に適する水に二酸化炭素(炭酸ガス)を注入したもの、天然水に二酸化炭素を注入したもの、天然水に自然の状態で二酸化炭素が含まれたものの三種類があります。
どれも無糖のものを「炭酸水」と呼び、糖・甘味料・果汁等を含む「炭酸飲料」とは区別します。
ここで解説するのは、無糖で甘味のない「炭酸水」についての解説です。
炭酸水の特徴
炭酸水は水より最近の猛暑対策に対する飲んだ時の爽快感を感じやすいことや、二酸化炭素の健康や美容効果の情報により好む人が増加傾向にあります。
冷たい方が二酸化炭素は高濃度になり約40℃でほぼ消えるとされます。
ペットボトルの場合は、一度開栓してしまうとその後栓をしても徐々に二酸化炭素は抜けて行きシュワシュワしなくなりますよね。
これは生活の中で経験しているのではないでしょうか。
炭酸水を飲むメリット
そんな炭酸水を飲むメリットは喉越しの爽やかさだけではありません。
炭酸水には一般的に以下のようなメリットがあると言われています。
1.疲労回復効果
2.血行促進
3.食欲増進
4.便秘解消
5.ダイエット効果
6.嚥下反射促進
一つずつ見ていきましょう。
疲労回復効果
直接的に炭酸水が疲労回復に効果があるとされるデータは見つかりませんでした。
ただ、炭酸水に疲労回復効果があると考えられているのは、炭酸水が疲労物質を尿と一緒に体外へ排泄するからだという説があります。
ですが、最近では疲労の原因物質を乳酸ではなく以下のように言われるようになりました。
長い間、乳酸が疲労を起こすと考えられてきましたが、最近では、乳酸が多くつくられることで乳酸の生成過程で発生する水素イオンの影響により身体が若干酸性に傾くこと、エネルギー源である筋グリコーゲン(糖)の蓄えが少なくなることが筋肉疲労の原因と言われています。(途中省略)
乳酸は筋肉からカリウムが漏れ出して筋収縮を阻害することを防ぐ働きがあるとも言われています。筋収縮の阻害を防ぐということは、乳酸が疲労を起こすのではなく疲労を防ぐ物質であることもうかがえます。
一部の情報では、二酸化炭素により胃腸が刺激され尿量が増加するため、体内の老廃物が排泄されることで疲労回復効果があると言われています。
けれど、乳酸を老廃物とするのであれば、疲労を防ぐ物質を排泄してしまうことになります。
また、アスリートは運動後の疲労回復を早めるために、8時間以内にグリコーゲンを回復させる必要があります。
そのためには、運動終了後に糖質を摂取するのが効率的で、糖質を摂ることで運動により減少したグリコーゲンを再合成させられることも分かっています。
多量の糖質を摂取するためには固形より液体の方がグリコーゲンの再合成率と吸収が早いのですが、糖質飲料を多量に飲むことは胃腸への負担が大きくなります。
そのため、飲む量を抑えた高濃度糖質飲料が良いとされ、そこに炭酸を加えた高糖度炭酸飲料での実験がなされています。
この結果によると、高濃度糖質飲料であっても炭酸の効能により、胃の消化活動が促進され、嘔吐の割合を有意に低下させることが示唆された。 と言うことに留められ筋グリコーゲンに及ぼす炭酸飲料の影響には把握できなかったとのこと。(参考:Sports Science in Elite Athlete Support 1 (2016) 45-54)
つまり、直接炭酸ガスが疲労回復に効果があるというより、胃腸への負担のある高濃度の糖質飲料であっても炭酸飲料として摂取すれば、吐き気や胃の不快感を軽減させることができるという別の側面があります。
そのため、疲労回復にも効果があるということになるのではないかと考えます。
血行促進
炭酸水を飲み血中の二酸化炭素濃度が高まることで、より多くの酸素を取りこんで運ぼうとするために血流があがると言われています。
温泉の炭酸泉も血行が促進されて、良く温まりますがこれと同様だと考えると良いかもしれません。
食欲増進
二酸化炭素が胃粘膜への刺激となり胃酸の分泌を促すため、食欲増進効果と消化促進効果があります。
胃酸は、胃液の一部で胃の中を一定の酸性に保ち、食物の消化と食物と一緒に体内に取り込まれた各種菌の殺菌を行っています。
ただこの時気をつけたいのが、炭酸水の温度と量です。
中医学では、消化器系は冷えと湿気で弱るとされてるため、冷たく冷やした炭酸水を空腹時に大量に飲むことは刺激が強すぎて逆効果になります。
これはデメリットのところで解説します。
また、胃が膨張することで満腹感を感じやすく一度にたくさん食べられなくなるため食べ過ぎの防止になるかもしれません。
食欲がない時は150mL程度を冷やし過ぎずに食事の最初に飲むと良いでしょう。
150mLは二口ほどです。
便秘解消
二酸化炭素の腸への刺激により腸の蠕動運動が活発になるため、便秘がちな人は起床後に炭酸水を飲むと良いかもしれません。
一度に飲む量は個人差はありますが、胃が膨張してお腹いっぱいだと感じることのないように、350mL~500mLまでを限度にするとよいですね。
ダイエット効果
炭酸ガスで胃が膨らむため、一度にたくさん食べ過ぎることを防ぐことはできますが、逆に食べながらあまり噛まずに炭酸水で流し込んでしまうのは、胃への負担となります。
満腹感も継続的なものではないので、直接ダイエット効果を期待するのはやめた方が無難です。
中医学では太るのも痩せるのも消化器系のシステムである五臓の「脾」の問題だと言います。
そもそも「脾」が正常であれば、太りすぎることも痩せすぎることもなく健康的な体型を保てるはず。
炭酸水を飲めば痩せられるということではなく、中医学的には、炭酸水の特徴をうまく使って胃腸機能促進をはかり、健康な胃腸に戻すという考え方に胃腸を丈夫にさせる食事を摂ることを心がけた方が良いと考えます。
嚥下反射促進
欧米では、嚥下困難な患者に炭酸水を用いて嚥下反射を促す治療が行われているとのことです。
炭酸の発砲の刺激が咽頭を刺激して飲み込みを促すというもの。
高齢嚥下障害患者に対するとろみ付き炭酸飲料の効果の検証が東京医科歯科大学でも行われ、とろみ付き炭酸飲料には嚥下改善効果があることが分かったとのこと。
とろみ付き炭酸飲料中の炭酸には嚥下改善効果があることがわかりました。
得られた知見から、とろみ付き炭酸飲料は、水分で誤嚥する嚥下障害患者の嚥下訓練に有効な可能性があります。すでに臨床現場でも炭酸水を用いた嚥下訓練が行われており、今後は、とろみ付き炭酸飲料を用いた嚥下訓練の効果を検証したいと思います。
使用されたものは炭酸飲料となっていますが、引用した文中に、「炭酸飲料中の炭酸に嚥下改善効果があることが分かりました。」と記載されているため、炭酸水でも同じ効果があるのではないでしょうか。
次に、炭酸水を飲む時のデメリットについて解説します。
炭酸水を飲む時のデメリットと気をつけたいこと
メリットも度を超すとデメリットになりますし、すでに何らかの不調がある人にとってはその症状を悪化させる原因ともなります。
炭酸水を飲む時のデメリットとなることは、次の通りです。
1.炭酸ガスが胃を膨らませるため胃酸が逆流しやすい
2.胃もたれ(未消化物が多い)時、大量に飲むと胃もたれが悪化しやすい
3.胃が弱った状態で飲むと刺激で胃痛を起こすことがある
4.炭酸ガスの腸への刺激により腸の蠕動運動により下痢しやすい人は下痢になることがある
5.炭酸水にクエン酸やリン酸が添加されている場合、長期にわたって常飲すると歯が侵食される可能性がある
主に胃腸へのデメリットですね。
順番に解説して行きましょう。
炭酸ガスが胃を膨らませるため胃酸が逆流しやすい
炭酸ガスの胃粘膜の刺激により胃酸の分泌が促進されるうえ、胃を膨らませるために胃酸が逆流しやすくなります。
逆流性食道炎、ゲップがよく出る人は炭酸水には注意が必要です。
逆流性食道炎、よくゲップが出るのは体の構成要素の一つ「気」がスムーズに巡っていない「気滞」の状態です。
気滞の人は炭酸水を好む傾向があるとも言われますが、炭酸水を飲む前に「気」が滞る原因の改善を考えましょう。
「気滞」は言い換えるとストレスが溜まっている状態ですj。
胃もたれ(未消化物が多い)時、大量に飲むと胃もたれが悪化しやすい
すでに胃もたれしている時は、食べたものがまだ胃に残り消化が進んでいない時。
未消化状態で残っています。
そんな時に大量の炭酸水を飲んでしまうと胃が膨らみもっと胃もたれが増してしまいます。
未消化状態で長時間食べ物が胃に残らないよう、胃への負担を軽減させるための基本はた食べ物をよく噛んでから飲み込むこと。
また薬膳では、消化を助ける大根や蕪などを特に消化に時間がかかる揚げ物や油っぽい食事の時に一緒に食べることも大切ですね。
前述しましたが、よく噛む前に炭酸水で流し込んでしまうことは避けましょぅ。
胃が弱った状態で飲むと刺激で胃痛を起こすことがある
胃が弱った時は炭酸ガスの刺激で胃痛を招くことがあります。
そもそも胃は体温以上で良く機能するので胃の調子が悪い時は温かい飲み物を選ぶようにしましょう。
胃潰瘍の人は炭酸水は止めておいた方が無難です。
炭酸ガスの腸への刺激により腸の蠕動運動により下痢しやすい人は下痢になることがある
メリットとしては腸への炭酸ガスの刺激で蠕動運動が活発になり便秘解消に効果がありますが、過敏性大腸炎や下痢気味の時は炭酸水は避けましょう。
下痢しやすくなってしまいます。
炭酸水にクエン酸やリン酸が添加されている場合、長期にわたって常飲すると歯が侵食される可能性がある
爽やかさを演出するためにクエン酸やリン酸などが添加された炭酸水があります。
酸性が強いとカルシウムが溶けてしまうため、歯への影響が考えられます。
歯が酸により溶ける臨界PHは5.5だとか。
炭酸水の多くがPH5.0と言う説があるので大量に常飲することを止め、特にレモン果汁や紫蘇ジュース等強い酸性のものを炭酸水に入れて飲む場合は気をつけましょう。
中医学で考える炭酸水を飲むメリット・デメリットまとめ
炭酸水は、キンキンに冷えたものを一気に大量に飲まなければ健康な人にはデメリットになることはあまりないと考えられます。
ただし、すでに何らかの胃腸の不調がある場合にはまずは胃腸の状態を健康に戻してから炭酸水を飲むようにしましょう。
健康な人へのメリットとしては、胃や腸への刺激により夏に食欲が低下した時の食欲促進効果や、便秘の人の便秘解消などに一時的に使う陽と良いですね。
けれど、どんなに効果が謳われていても、適切な量や温度で飲むことが大切です。
本来健康な人間の体は、適度に食欲があり消化吸収された後の排泄は便秘でも下痢でもなくスムーズに行われるもの。
炭酸水だけに頼らずに、本来の状態を健康に近づけることが先決です。
炭酸水はその助けになるものと考えると良いですね。
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