日本の冬はカニが美味しいですね。
カニは低カロリーで低脂肪。更年期世代以降におすすめの栄養も豊富なのでたまには食べたい食材の一つです。
薬膳では、カニには血行改善、血液浄化、髄を補填する、五臓の肝と腎を強くさせると言われます。
現代栄養学でも、カニに含まれるキチンキト酸に免疫機能改善や整腸作用があると言われ、甲羅のアスタキサンチンに活性酸素消去、タコなどにも含まれるタウリンが血中コレステロール値や高血圧を抑制し、動脈硬化予防になると言われています。
また、カルシウムが豊富に含まれることから骨や骨髄再生効果も言われています。
冬に食べるイメージがありますが、薬膳では強く体を冷やす性質の寒性です。
寒い時に更に冷えるものは食べない方がよいのかと思いますよね?
更年期前後の生活習慣病予防にもなるカニの栄養を旬だからこそ取り入れたいところ。
そんな時に、使えるのはカニは冷えるからと諦めるのではなく、冷やす性質をなかったことにする調理法や食材の組み合わせ方があります。
体を冷やさずカニを食べる3つのポイントがあります
目次
刺身でなく鍋料理にする
まず、カニの食べ方です。刺身ではなく鍋料理がおススメです。
温泉地の蟹づくし料理だと、お刺身のカニが出てきますよね。
鮮度が良いのでせっかくなら甘いお刺身を味わいたいところですが、たくさん食べ過ぎないようにした方がよいです。
薬膳ではそれを食べた時の体への影響(温度)を5段階で表します。
熱性・温性・平性・涼性・寒性で、真ん中の平性は食べても温めも冷ましもしないもの。全食材の7割から8割がこれに当たります。
これは、食材を調理する前の性質を言い、カニは寒性となっているのです。
つまり、お刺身だと強く体を冷やすことになります。
胃腸が弱い人、冷え性の人、冷えてお腹を下している時も特に避けたい食べ方です。
では、おすすめの調理法はと言うと、鍋料理です。
焼きガニ、ゆでガニも熱々で食べられるなら良いのですが、冷えてしまったものはやはり体を冷やすからです。
カニ鍋なら、カニを食べる時に熱々状態で食べられるところがまずお腹にやさしくカニの冷やす性質を緩和させる食べ方と言えるでしょう。
カニ鍋の出汁で冷やす性質を緩和させる
二番目は、出汁汁の工夫です。
鍋と言えば、昆布出汁と思っているかもしれませんが、昆布に何かを足しても良いのです。
これは漢方薬が生薬を何種類か煎じて飲む発想と同じで、組み合わせて煮出すことで出汁に食材の複数の効能が抽出されるからです。
昆布も寒性なので、カニ+昆布ではさらに冷やすことになってしまいます。
カニの冷やす性質を緩和するためには、出汁の中に温め食材を使います。
例えば、ベース出汁の昆布の代わりにかつお出汁やいりこ出汁にすればよいですし、カニからも昆布と同じうま味成分のグルタミン酸が出るので必ず入れなければならないというわけではありません。
重要なのは、加える食材です。
温める性質を持つ、生姜、陳皮(温州ミカンの皮の干したもの)、紅花を入れます。
出汁の中に、この成分が抽出されるのでカニの冷やす性質が緩和されるのです。
次にそれぞれの食材の性質を見てみましょう。
生姜は生と調理したものとでは特性が変わる
生姜は温める!と思っている方も多いと思います。
薬膳では生の生姜を「生姜(しょうきょう)」、蒸して乾燥させたものを「乾姜(かんきょう)」とそれぞれ区別しています。
一時、温活女子はマイ生姜チューブを持ち歩き、外食の時になんにでもおろし生姜を入れて食べたり飲んだりしていたとか。
確かに、おろし生姜を摂るとカーっと体が熱くなるのを実感されるでしょう。
でも、カーっと熱くなりじわ~と汗が出た後、冷えて来ませんか?
これは、温めるというより熱で毛穴を開かせて発散させているのです。
寒い時に夏のように毛穴を開いたままにしていたら体温を逃がしてしまうし、外からウイルスなど感染症の原因となるものを容易に体内に入れてしまうと思いませんか?
生の生姜であるおろし生姜は、風邪のひき始めでまだ内部まで邪気が入っていない段階で、引きはがす意味で発散効果を使うのです。
一方、調理してあれば、お腹の中から温めます。
乾姜をわざわざ作らなくても、調理したショウガはこれに当たります。
なので、出汁の中に少し多めにショウガのスライスを加え、カニの冷やす性質を緩和させお腹の中から温めて胃腸機能をアップさせ消化を助ける狙いです。
お腹が弱めの人も、ドロッとなった要らない水分を溜めやすい人も陳皮が解決
今が旬のみかん。
その皮を干したものが陳皮(ちんぴ)です。
陳皮は七味唐辛子にも入っているので知らないうちに摂っている薬膳食材です。
陳皮は香りで胃腸や肺の気を巡らせ、消化を助けるだけでなく下痢や痰の原因となる要らない水分を体から排泄させると言われている漢方薬の原料でもあります。
カニの冷やす性質を緩和させるだけでなく、血めぐり改善をアップさせるためには気を巡らせることは不可欠なため陳皮を出汁に入れます。
また、すでに要らない水分を溜めている人や痰がある時、下痢しやすい人がカニを健康的に食べるためのなかったことにする薬膳の食材の組み合わせとなるのです。
温めて血流アップ!でも注意が必要な紅花
漢方薬では、婦人科疾患の生薬として有名な紅花。
少量を出汁に入れると体を温めて血を補うと言われ、多めに使うと血流アップ効果が有名です。
出汁には一つまみ程度入れて、スープとして一緒に煮出します。
冷えて生理痛がある時などのお鍋に使うと良いのですが、気をつけなければならないことがあります。
それは、血流をアップさせるため妊婦さんの使用は禁忌だということ。
温める、血流アップと聞くとどんな女性にも良さそうに聞こえますが、血流をアップさせることで支障が出る可能性のあるデリケートな状態にある妊婦さん、生理中の方は避けて下さい。
つけダレのポン酢でも温めて消化を助ける
三番目はつけダレポン酢の工夫です。
出汁に味をつけていない場合、ポン酢などのつけダレを使いますよね?
そのつけダレにも温めて消化を助ける工夫をします。
いつも使っている薬膳出汁醤油に黒酢と米酢、柚子の果汁を絞り皮を漬けた即席ポン酢ですが、そこに大根おろしならぬ蕪おろしを使います。
上海ガニの本場中国でも、カニは黒酢と生姜で食べるのです。
温めた紹興酒をタレに加えることもあるようで、それほど冷やさないように食べることが基本になっているのですね。
蕪おろしにしたのは、蕪には大根と同じく消化を助ける働きがありますが、大根が冷やすのに対し蕪は温めるからです。
まとめ
体を強く冷やすカニの栄養を冷やさずに摂る3つのポイントは、まず、調理をして食べる事です。
調理の中でも、甲羅などの栄養が出汁に溶け出す鍋料理がおススメです。
お出汁に溶け出したエキスを余すところなくいただくには〆は麺類より出汁を米粒が吸った雑炊の方がよいですね。
次に、出汁に温める性質の食材を加えます。
生姜や陳皮、紅花などです。紅花は効果が高い分、妊婦さんや生理中の女性は摂らないようにしてください。
最後に、つけダレにも温めるお酢を使います。
特にエイジングを気にする世代はポン酢を黒酢で作り、蕪おろしでも温めて下さい。
これで、カニを食べた後も冷えを感じないはずです。
もし、温まり過ぎるという方は、食後に緑茶を飲んで下さい。
緑茶の冷やす性質が温まり過ぎを緩和させるためです。
この3つのポイントは、お腹が弱く冷え性の女性がカニを食べることを想定しています。
熱がりの方、お子さんは温め加減を調整してくださいね。
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お鍋料理は定番の野菜や魚介、肉などの具材とお出汁を変えれば簡単に薬膳になる