私の周りの方や、私の発信を読んで下さっている方は薬膳がどんなものかなんとなく理解していらっしゃるかもしれません。
でも、一般の方は薬膳と漢方薬の違いが分からなかったり、薬膳はレストランでしか食べられないものだと思っている方が多いのではないでしょうか?
「薬膳」をウィキペディアで調べると、
薬膳(やくぜん)とは中医学理論に基づいて食材、中薬と組合せた料理であり、栄養、効果、色、香り、味、形など全てが揃った食養生の方法である。「薬膳料理」と称されることもあるが、「膳」自体に「料理」の意味が含まれている(重言)。
と書かれています。
なんだかよくわかりませんよね。
ここでは、薬膳とはどのようなものなのかをやさしく説明します。
目次
薬膳はレストランでなくても食べられる
ズバリ言うと、レストランでなくても家庭で食べられるものです。
そして、漢方薬の材料(生薬・中薬)として使われているものを使うこともあります。
というより、食べ物でもあり漢方薬の材料となるものがあるということなのです。
中国では、昔から自然界にあって人の口に入るものにはすべて性質や効能があり、それが人の体に影響を及ぼすことが知られていました。
全ての物を、効能は緩やかだが毎日食べても大丈夫なもの、効能があり補助的に使うと健康を維持し体力アップなどに効果のあるもの、効能が強くピッタリ合えば不調改善になるが長期使用や間違った使い方をすると害になるものと三段階に分けました。
一番効果があるものと補助として使うと健康維持や体力アップになるものが漢方薬の材料とされる生薬と言えます。
効能は穏やかだが毎日食べても大丈夫なものが私達がスーパーで買って食べている食材です。
スーパーで買える野菜や果物、肉や魚介類、海藻や豆類などにはすべてに性質と効能があります。
これらを使って、毎日の体調に合わせて作る食事がすでに薬膳なのです。
薬膳を始める時に知っておきたい二つの事
家庭料理を薬膳にしたいと思ったら、知っておきたい二つの事があります。
一つ目は、もうお分かりかもしれませんが、食材の性質や効能です。
性質とは、その食材を食べた時に体がどう感じるかです。
体にこもった熱を冷ますのか?冷えている時温めるのか?どちらでもないか?大きく分けるとこの3つの性質です。
そして、効能はいくつもあります。
栄養学で、炭水化物は体の熱量になり、たんぱく質は骨や筋肉を作る、ビタミンは体の調子を整える・・・などと似ています。
血を作る、パワーの元になる、水巡りを良くするなどです。
では、このような性質や効能をどのように使えば良いのでしょうか?
食材の性質や効能を活かすためには、中医学の知識を使います。
家庭料理を薬膳にする二つ目は中医学の知識です。
中医学は東洋医学の一つで、中国伝統医学の略です。
すでに二千年前には黄帝内経(こうていだいけい)という最古の医学書が編纂されて、それからも何人もの歴史に残る名医達によって体系立てられたものです。
中国では西洋医と中医は両立しており、西洋医学も中医学も両方を理解している中西医結合治療を行える医師もいます。
この医師は薬の処方を、西洋医学の薬にするか中薬にするかを選ばせてくれるのです。
中医学の特徴は、検査でどこの臓器が悪いのかを知る西洋医学に対して、その人の体の観察で体の中がどのようになっているのかを知ることです。
そして、人の体は季節や天候に関わることにも注目します。
それは、中医学が陰陽論や五行学説などの自然界と人の関係を哲学的に考えるからです。
西洋医学が検査の数値やレントゲンなど実際に目にすることのできる証拠で熱やだるさの原因が分るのに対し、中医学では検査はせず、人の体から出るものすべて、例えば肌の色やツヤ、髪の状態、便や尿の色や量や状態など複数を組み合わせて突き止めます。
それによって、タイプに分けてそのタイプに合った食材をどのように料理するかが薬膳と言う訳です。
薬膳では体の傾きが不調の原因として、傾きをフラットにする
薬膳の基になる中医学は、病気になる前の不調、つまり未病を元の健康な状態に戻すのが得意です。
未病状態は、体のバランスの崩れです。
やじろべえの左右どちらがが下がったり上がったりして平衡を保ってていないのです。
平行な状態が健康なので、足りないものは補い要らないものは出してやじろべえの釣り合いを保ちます。
それを食べ物でするのが薬膳です。
なので、ただ世間で知られるようになったクコの実やなつめが使われているから薬膳料理だ!とはならないのです。
本来の薬膳は、一人一人違う体質や体調に合わせて作るものだからです。
薬膳ができるのはお店ではなく、本来は家庭
今までお話したように、薬膳とは日々変わる体調に合わせたり、気候や天気が体に与える影響によって変えるものなのです。
なので、一食お店で食べたとしても、それがその時の体調に合っていなければ逆効果になることもあります。
それに、お店ではお客さんに合わせて一食ずつ作ることはできませんよね?
そのため、きちんと薬膳を学んだシェフが作る薬膳は、「その季節に起こりやすい不調予防の薬膳料理」や「女性に不足しがちなものを補う薬膳料理」などのテーマを決めて作られています。
それに比べて、家庭料理ならその時の体調やその人の体質改善のための料理ができますね。
中華圏の国では、母から子へ、その子から孫へと「これは薬膳」と教えられなくても引き継がれているのが素晴らしい点です。
明日は雨が降って冷えるから、要らない水分を出して体を温める食材を使った料理にしよう!
今日は汗をたくさんかいたから、失われた水分を補い体にこもった熱を冷ます食材を中心に食べよう!
これができるのが家庭料理です。
薬膳は体質的に避けた方が良いものを食べた時に食べ物の性質や効能を使って食べながらバランスを取ることができる
食べ物の性質や効能によっては、体質的に食べるのを避けた方が良いものがあります。
でも、たまには食べたくなることもあるでしょうし誰かと一緒の時は一人だけ食べないのは雰囲気が悪くなってしまいますよね?
そんな時は、その食べ物の性質や効能を打ち消す食べ物を一緒に摂ることで、その場でバランスを取ることができます。
それが「なかったことにする薬膳」です。
このように、薬膳は特別なイベントメニューではなく、家庭でできる健康を維持して病気になる手前の不調のうちにセルフケアできる食事なのですね。
まとめ
薬膳とは、レストランでなければ食べられない特別な料理ではなくひとりひとりの体調に合わせて作る料理です。
体調に季節や天候も影響するため、ある程度事前に予測して不調予防が可能。
薬膳を始める時に知っておきたい知識は、食材の性質や効能と中医学に基づく人の体の観察です。
一食どこかで薬膳料理を食べたからと言ってすぐに体調に変化がある訳ではなく、毎日の食事で健康を維持したり未病を早めに健康状態に戻す食事が本来の薬膳なのです。
そして、食材の性質や効能を組み合わせて、体質的に避けた方が良い場合でもその場でバランスをとることもでき、これが「なかったことにする薬膳」です。
一生使える食の知識、身に付けて健康管理に使ってみてはいかがですか?
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